ナワリヌイとウクライナ: ロシアの「反体制派」指導者のチームが考える戦争の打開策

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アレクセイ・ナワリヌイ率いる反体制派チームとは一体何者なのでしょうか?反体制派を自称するこれらのロシアの勢力は、基本的な民主主義的信条とロシアによるウクライナに対する戦争の終結について発言していますが、彼らの発言を詳しく見てみると、それが彼らの主要なテーマとはほど遠いことがわかります。

免責事項
この調査の著者は、ロシアの「反体制派」のTwitter(現X)アカウントを分析しましたが、彼らのプロフィールを広めないために元の投稿へのリンクを意図的に提供していません。

そこで市民ネットワーク「OPORA」のチームは、ロシア現政権に反対する立場をとるロシア人のメディア活動に対する詳細な調査を行うことにしました。この調査の目的は、ロシアの「反体制派」の実態はどうなのか、彼らの公式見解は本当に正義の確立を目指しているのか、彼らが政権を握った場合に世界はどのような課題に直面することになるのかを明らかにすることです。本記事では、ロシアで最も著名な反体制派指導者アレクセイ・ナワリヌイとそのチームにスポットを当てて紹介をします。

ロシアの「反体制派」と戦争の打開策

戦闘行為の停止とウクライナの国際的に承認された国境からロシア軍を撤退させるだけでは、安全と安定を達成するのに十分ではありません。モルドヴァ・シリア・ウクライナ・ジョージアに対する軍事侵略、中央アフリカ共和国やマリにおけるロシア軍の「軍事作戦」、権威主義政権に対するロシアの支援などといった近年のロシアの歴史は、犯罪に対する説明責任、戦争犯罪者に対する法の裁き、損害賠償、ロシアの構造改革と帝国主義を破壊することなしには、問題を解決するどころか、次のロシアの侵略を先送りするだけであることを示しています。

ウクライナと西側諸国の戦争における真の勝利は、前線だけでなく、将来の持続可能な平和を保証するためのロシア内部における変革を通じてもたらされなければなりません。今日のロシアによる他国への絶え間ない脅威に加え、大規模な侵略は、国境付近での戦争が欧州諸国にもたらす社会的・経済的な国内への影響を示しています。ウクライナはパートナーとともに、ロシアが国際舞台で安全で信頼できるパートナーとしての信頼を回復するために取るべき具体的な措置のリストをすでに作成しているところです。

ロシアの「反体制派」とウクライナの人々は、ロシアの独裁政権という共通の敵を持っていると広く信じられています。プーチン政権との戦いとウクライナの平和のための戦いは、同じ戦いであるように考えられています。

しかし、戦後のロシアをどのような政権が率いるにせよ、犯罪・犠牲者・破壊に対する賠償と責任という点では、同じ義務を負うことになります。敗戦からの社会経済的復興・ロシアの改革・制裁下での統治・ウクライナへの賠償という重荷は、ポストプーチンにおけるロシアで政治的野心を持つロシアの政治家にとって、時間的に制約のある問題です。これは、ウクライナとロシアの反体制派の要求と利益における最初の接点となります。

現在の話をすると、ロシアの「反体制派」はすでに、特に海外在住のロシア人の間で、その動員力と政治的資源を構築しつつあります。したがって、ロシアの「反体制派」の優先事項のひとつは、「反体制派」が戦っている独裁的なロシアに対して防衛戦を繰り広げているウクライナの要求の実現よりも、国際舞台におけるロシア人の利益のために働きかけるロビー活動です。第二に、ロシアの「反体制派」は、公的・政治的活動を継続するために、国際的パートナーからの財政面・情報面での支援も必要としています。このようにロシア人は、ポストプーチンにおけるロシアの要求と義務に関するナラティブ・物質的または非物質的資源・現在および将来の議題をめぐって、ウクライナと競合しているのです。

現在のところ、ロシアの「反体制派」は独裁政権の犠牲者ではなく、ウクライナのために司法を回復し、持続可能な平和を実現するために、こうした手段を講じる可能性のある潜在的な勢力です。しかし、それが今彼ら自身の政治課題の一部となっているかどうかは確認していかなければならない問題であり、そこで我々はこの調査の過程でその答えを見つけることにしました。

ナワリヌイのチームとは何者なのか?

ナワリヌイのチーム 写真:picture-alliancе, AP Photo

ナワリヌイのチームは、ロシアの政治家アレクセイ・ナワリヌイを支持するグループから成り立っています。ナワリヌイが「反汚職財団(ロシア語名:Фонд борьбы с коррупцией(ФБК))」を設立した後、2011年に結成されました。「反汚職財団」の主な目的は、ロシア当局の汚職構造を暴露し、調査報道と反汚職に関する啓蒙活動を行うことでした。しかし、ナワリヌイが市民活動や政治活動を始めたのは、2004年にモスクワの都市計画の分野で反汚職や人権活動に従事する「モスクワ市民保護委員会」を設立した時に遡ります。その後、ナワリヌイの社会活動は人権活動や反汚職活動へと発展し、「反汚職財団」の設立によってついに組織化されました。2013年、モスクワ市長選に出馬し、現首長のセルゲイ・ソビャーニンに次いで2位という結果でした。

2020年8月、ロシアの特殊部隊が神経剤兵器ノヴィチョクでナワリヌイに対する毒殺を試みました。それによる被害から回復した後、ナワリヌイはロシアに到着した空港で詐欺とマネーロンダリングの容疑で逮捕されました。その後、欧州人権裁判所は、ナワリヌイの容疑と逮捕は違法であり、公正な裁判を受ける権利に違反しているとの判決を下しました。彼は今後9年間、厳重な刑務所で服役することになっています。カナダの映画監督ダニエル・ロアーは、「ナワリヌイ」というドキュメンタリー映画を制作し、2023年のアカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を受賞しました。

現政権に対抗している熱心な活動家の典型的なドキュメンタリーのように見えます。しかし、そう単純ではありません。注意深い人たちは、ナワリヌイがいかに巧みに彼に関する情報を作り出し、人々に彼への共感だけでなく英雄として捉えることも促しているか、以前から気づいていました。この映画賞にノミネートされた映画「破片の家*(宇題:Будинок зі скалок)」の共同監督兼ラインプロデューサーであるアザド・サファロウが的確に指摘しているように、アカデミー賞受賞を機会ととらえてハリウッドを巧妙に利用しているのです。そこで、調査結果を見ていく前に、ナワリヌイが「積み上げてきたもの」を見てみましょう。

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題名は翻訳者による翻訳

クリミアに関するナワリヌイの発言

ウクライナの人々がナワリヌイについて今でも印象的で最も有名な発言のひとつは、2014年にロシアのラジオ局「モスクワのこだま(エーハ・マスクヴィ、ロシア語名:Эхо Москвы)」のインタビューでのクリミアに関する発言です。ロシアのインタビュアーであるアレクセイ・ヴェネディクトフから直接「クリミアは我々のものなのか?」と訊かれたナワリヌイは、クリミア半島はそこに住む人々のものだと答えました。ナワリヌイは、「クリミアはあらゆる国際規範を露骨に破って占領された」が、事実上ロシア領であると指摘し、「クリミアはロシアの一部であり続け、近い将来において再びウクライナ領になることはない」という考えを受け入れるようウクライナ国民に提言しました。ナワリヌイがロシア連邦の大統領になった場合、クリミアがウクライナに返還されかという問いについて、彼は「クリミアはサンドイッチのように、取り換え可能なものなのか?」という有名な一節とともに回答しました。クリミア半島がウクライナ領であるという明確な言葉は、「反体制派」からは聞かれませんでした。ナワリヌイのこうした言葉が彼の仲間の評判を下げ続けていることから、彼らは定期的にこのテーマに戻らざるを得なくなっています。

ラジオ「モスクワのこだま」のナワリヌイ

ナワリヌイの関係者の一人であるレオニード・ヴォルコフは、自分のリーダーを擁護しようとし、「一番最初の声明」(2014年3月に彼のLiveJournalブログ(ロシアで人気のあるブログ用プラットフォーム)で公開されたクリミア占領に関するナワリヌイの最初の声明とされるもの)を参照するよう勧め、「文脈から引用を用いる前に一番最初の声明を読むことをあまりにも怠っているTwitter(現X)の批評家」を非難しました。

この調査の著者たちは、「一番最初の声明」をしっかりと見直しており、これを踏まえたうえでナワリヌイによる他の多くの疑わしい発言を発見しました。クリミアについて述べる前から、このいわゆる反体制派は、ウクライナ人を「ホフリ(ホホール:単数系、ホフリ:複数形。ロシア人がウクライナ人に対して使う侮辱的な帝国主義的呼称)」と呼び、ウクライナ人・ベラルーシ人・ロシア人は「単なる隣人ではなく、アパートの部屋が違うだけの兄弟」であり、ウクライナやベラルーシとの「兄弟的」関係は「この世界におけるロシアの戦略的優位性(ロシア語からの記事の筆者による翻訳)」によるもの、という考えについてわざわざ一段落を割いて説明を行っているのです。2014年のロシア軍によるウクライナ侵攻後における発言であることから、どのような兄弟関係を指して述べているのかは不明です。そして2022年、ウクライナ人はブチャ・マリウポリ・イジュームやその他の地域で、再びこの兄弟愛を実感したのでした。

2014年のLiveJournalにおけるナワリヌイの投稿のスクリーンショット

また、この記事の中でナワリヌイは、「クリミアがウクライナに属するのは妥当なのか」と自問し、以下のように回答しています:「もちろん、そんなことはない。クリミアが偶然ウクライナに『与えられた』という事実は、間違っていて、不公平なものだ。その事実は、ロシア連邦の一般住民にとって不公平であり、不快なことである。クリミアは独裁者フルシチョフの違法な自発的決定によって移管された。この責任は、ソ連共産党と愚かな政治部にある。このことは、突然好戦的になった共産主義者に思い知らせてやるのがいいだろう。黒海艦隊基地の「賃貸料」を支払う必要があることは、更に腹立たしいことである。クリミアはいいところで美しい場所だ。妻と私はそこで初めての休暇を過ごした。」

この発言は本質的にプロパガンダであり、ソ連当局とソ連崩壊後における現代のロシアがクリミア占領を正当化するために広めた神話です。クリミア半島の歴史を知るのに、大統領候補はおろか歴史家である必要もありません。クリミアは一度もロシアに帰属したことはなく、ロシア帝国に占領され、後にソ連に占領されました。20世紀初頭にボリシェヴィキがクリミア半島を占領した際、クリミアの住民は抵抗して独立を宣言し、その結果、抵抗の先頭に立った約600人のクリミア・タタール(クリミアの先住民、「キリムリ」とも呼ばれる)が銃殺されました。20世紀半ば、当時のソ連当局は20万人近いクリミア・タタール人を祖国から追放し、クリミア半島に特にロシア人を入植させてました。このことをナワリヌイは知らないか、無視しているかは分かりません。

このように、ナワリヌイはクレムリンのプロパガンダを繰り返すだけでなく、それをより洗練されたものにし、一種のインテリであるかのような雰囲気を醸し出しているのです。

この一方で、ナワリヌイは、クリミアの占領は国際法違反であり、ロシアを含む国際的に承認された条約を尊重しなければならないとして、クリミアの占領を非難しています。また、プーチンがクリミア半島占領の根拠として提示した擬似国民投票は、現地の民意の表明とは考えていないとしています。ナワリヌイは、自身の認識により、ある種の不協和音を生み出しています。クリミアはウクライナではなくロシアであり、この問題における唯一の問題は、ウクライナ人やクリミア・タタール人に対する蹂躙でもなく、侵略者(ましてや国際法に違反している)に抵抗するすべての人々に対する拷問や投獄でもなく、国際法違反であるというのです。では、もし世界が国境を規制しなければ、占領は正当化され、先住民に対する破壊活動も当たり前なのでしょうか?

2023年の初め、「クリミア問題」はマリア・ピェフチフ(ナワリヌイのチームメンバー)も巻き込み、The Guardianのインタビューでは、ナワリヌイのクリミアに関する発言について、「話のテーマ(「反体制派」を解放する戦い)とは関係ない」とコメントを拒否しました。しかし、ピェフチフが何故「クリミアはウクライナ」と明確に答えず、ナワリヌイの投獄に関するテーマに戻らなかったのかは謎のままです。

ナワリヌイのチームはまた、定期的にTwitter / Xや、YouTubeの動画にクリミアのないウクライナの地図を追加したりしており、これによりロシアによるクリミア半島占領を正当化しています。例えば、ウラジーミル・ミロフは「ナワリヌイLIVE(ロシア語名:Навальный LIVE)」のレギュラーコラムで、ウクライナの原子力発電所について論じる際にクリミアのないウクライナの地図を使用しました。彼は、それが地図ではなく「図面」であり、したがって地理的に正確ではないと説明することで、批判から自分自身を守ろうとしました。また、ナワリヌイのチームが2017年の大統領選挙運動中にクリミアをロシアの一部と記した地図を使ったこともウクライナ人の記憶に残っています。

「サンドイッチ」に関する茶番劇をまとめてみましょう。2022年、ナワリヌイのチームの一部は、「クリミアはウクライナ領である」という重要なメッセージを発言できるようになりましたが、彼らが言及しているのは国際法だけです。もちろん、何もないよりはましですが、ナワリヌイの関係者は、補償政策と18世紀から現在に至るまでロシアによる弾圧を受けてきたクリミア・タタール人に対する謝罪について述べているわけではありません。その上、ロシアの「反体制派」と呼ばれる人々がこのような話をしているとしても、占領地でウクライナの財産を不法に押収したロシア人がどのような状況に将来的に置かれるのか、ウクライナに対する損害賠償の仕組みはどうなるのかについては、何も発言していません。いずれにしても、「(黒海艦隊の)賃貸料を払う」のはやはり「迷惑」なようです。

ロシアによる全面侵略開始後のナワリヌイとそのチーム

ナワリヌイのチームのメンバーは、他のすべての「反体制派」のロシアのコミュニティから自分たちを切り離し、彼らとの協力を拒否することを公に宣言しました。ロシアが本格的な侵略を開始した後、ナワリヌイの関係者は、それ以降の活動は事実上すべて「情報戦線」つまり政治空間ではなく情報空間で活動することに限定すると表明しました。ナワリヌイの投獄の詳細を取材し、彼の釈放を主張するとともに、ロシアによるウクライナに対する戦争に関して伝えています。

「反体制派」の支持者たちは、制裁を自分たちのもう一つの「戦線」だと考えています。2022年4月、彼らはロシアの財産の窃盗やロシアによるウクライナに対する戦争の煽動に関与したロシア政府高官、メディア関係者、オリガルヒを含む「6,000人リスト」(または「汚職官僚・戦争犯罪者リスト」)を作成しました。それ以来、ナワリヌイのチームの代表は、このリストを個人に対する制裁の参考資料として使用するよう西側諸国に積極的に提唱していますが、この問題に関してウクライナ側とは一切やりとりをしていません。2023年3月に「反汚職財団」の代表であったレオニード・ヴォルコフが、「6,000人リスト」に掲載されているロシアのオリガルヒであるミハイル・フリードマンとそのビジネスパートナー3人に対する制裁解除をEUに求める書簡に署名したスキャンダルで辞任に追い込まれたことは注目に値します。

ナワリヌイのチームはロシアの撤退戦略することをどう見ているか

すでに述べたように、戦闘行為の停止と1991年時点のウクライナ国境からのロシア軍の撤退は、持続可能な平和を達成するための必要条件ではあるものの十分条件ではありません。分析には、ウクライナの知識人や市民活動家が策定したロシアの撤退に関する以下の戦略を用いました。それは、ウクライナの正義を回復し、ウクライナの国内政治に対するロシアによる不干渉という持続可能な保証を確立し、将来的な侵略の再発を防止することを目的とした具体的措置に関する計画です。

ロシアが戦争から撤退するために、ナワリヌイのチームがロシアの撤退についてどのような戦略を考えているのかを分析するため、Twitter / Xのフォロワー数が最も多いメンバー12人を選びました。Twitter / Xは、選挙で選ばれた野党議員の中で最も多くの人が利用しているプラットフォームであり、彼らの支持者や潜在的な有権者との重要なコミュニケーションプラットフォームであるため、Twitter / Xを選びました。サンプルには、2つの共同アカウントと10の個人アカウントが含まれます。

「反体制派」のメディア関係者

2022年2月24日から2023年2月7日までの、いわゆる「反体制派」の全投稿を分析しました。データは選択したTwitter / Xアカウントに対してウェブスクレイピング処理を行うことで収集しました(ここでのスクレイピング処理とは、特定のユーザーによる投稿のデータベースを自動作成することを指します)。最終的なサンプルは、ユーザー自身の投稿、他のユーザーの投稿への返信、人気記事・動画・その他の外部コンテンツへのコメントのみ対象としています。

ロシアの戦争からの撤退戦略について言及しているメッセージに焦点を当てました。トピックは以下の9つです:

– ロシアの戦争継続能力を制限する方法として)ロシア市民やロシア企業に対する制裁の実施;
– ウクライナへの武器供給の支持、あるいはそれとは反対にその中止の要求(これは、ナワリヌイのチームがウクライナの勝利を求めてウクライナ全領土における占領解除を望んでいるのか、それともウクライナが和平交渉に入ってウクライナの領土の一部を放棄すべきだと考えているのかを理解する一助となります);
– ウクライナ-ロシア間の交渉の必要性とその実施条件(そして、彼らの考える平和が、ゼレンシキー大統領の「平和の公式」でウクライナが表明した要求とどの程度一致するか);
– 戦争終結後のウクライナへの賠償金の支払い(賠償額、その財源、金額算出と支払いのメカニズム);
– ロシア人の集団的責任(ウクライナで戦争を引き起こした責任は誰にあるのか、ウクライナが勝利した場合の謝罪に関する方針についての見解);
– ロシアの戦争犯罪人に対する裁判;
– ウクライナの一時占領地からのロシアの撤退(軍だけでなく、政治幹部も含む);
– ウクライナから強制移住させられた子供たちの返還;
– ロシア連邦の将来像(国境変更、内戦、内部改革の可能性など)

あるテーマについて言及したからといって、その政治家が、例えば、正義やウクライナへの賠償という文脈で制裁について述べたということではありません。本調査では、これらのテーマに関する言及をすべて考慮しています。

サンプルに含まれる「反体制派」の発言は文章でのみ収集されたため、対象の政治家のインタビュー・ポッドキャスト・生放送・YouTubeなどはデータセットに含まれていません。

本格的な侵略が始まってから約1年の間に、ナワリヌイのチームのメンバー(運動指導者自身を含む)は、ロシアの撤退戦略に関連する投稿を合計2,577件行いました。しかし、全面戦争からのロシアの撤退戦略に関する投稿は、対象期間中のナワリヌイのチームメンバーの投稿総数における約10%に過ぎませんでした。

これについて最も積極的に投稿したのはレオニード・ヴォルコフで、664件でした。2位と3位は「チーム・ナワリヌイ(ロシア語名:Команда Навального)」と「ナワリヌイLIVE(ロシア語名:Навальный LIVE)」で、それぞれ278件と208件でした。「反体制派」の個人ページでは、イヴァン・ジュダーノフ(195件)とキラ・ヤルミシュ(177件)が2位と3位でした。ヴャチェスラフ・ギマディ(71件)とドミトリー・ニゾフツェフ(22件)がロシアの撤退戦略について最も少なく投稿をしていました。

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2022年9月頃から、ナワリヌイのチームがロシアの撤退戦略について取り上げることが少なくなっていることも同様に示されています。例えば、2022年4月から5月にかけて、「反体制派」が制裁について340回言及したのに対し、2022年12月から2023年1月にかけては70回にも達していませんでした。他のテーマについても同じ傾向を示しており、ロシア人の集団的責任については2022年3月に最も多く言及されました(143回)が、2023年1月には24回しか言及されていません。これはおそらく、ウクライナにおけるロシアによる戦争を終結させることの重要性とそれを達成するための方法が、もはや最も重要なテーマではなくなっていることを示しているのでしょう。

ナワリヌイのチームが対ロシアおよび対ロシア人制裁について考えていること

全面戦争が始まってからの約1年間、ナワリヌイのチームは制裁導入について1,020件の投稿を行いました。レオニード・ヴォルコフ(232件)、アレクセイ・ナワリヌイ、ルスラン・シャヴェッディノフ(各105件)がこのテーマで最も活発に投稿を行っていました。このテーマはナワリヌイ支持者の間で最も人気がありましたが、彼らの関心は1年の間に徐々に低下していきました。例えば、本格的な戦争が始まって2ヶ月目には、ナワリヌイのチームのメンバーは制裁を求める投稿を176回行っていましたが、2023年1月には制裁について言及されたのはわずか29回でした。

2023年2月、ナワリヌイのチームはソーシャルメディア上で「祖国に幸福を願うロシア市民の15箇条」(以下「15箇条」)と題する文章を発表しました。そこには、戦争を終わらせるための戦略に関する彼らのビジョンが簡潔にまとめられていました。制裁に関しては、「15箇条」においてたった1回しか触れられていませんでした:プーチン政権が倒された後、ロシアの石油・ガス産業に対する制裁を解除し、その利益の一部をウクライナへの賠償金に充てること。

一方で、このような制裁方針へのアプローチは、西側社会から承認される可能性は低いです。対露制裁の主な目的は、ロシアの軍事・経済能力を破壊し、ロシアの政治・軍事指導部にとって戦争の継続がますます困難なものにすることです。同時に、制裁政策は、ウクライナに対する戦争とロシア軍がその領土で犯した戦争犯罪に直接的または間接的に責任を負うロシアの政府高官たちから、彼ら自身の資源(金銭、財産、ヨット等)を奪うことも目的としています。第三に、制裁はロシア社会の「目を覚ますこと」に寄与します。ロシア社会はいまだに侵略戦争を支持し続け、ロシア国内での動員活動に同意しています。制裁が解除されれば、ロシアは再び国際社会で歓迎され、ロシアは急速に力を取り戻し、近隣諸国に対して侵略的な戦争を行い、国際法の基本原則に違反する能力を取り戻すでしょう。ナワリヌイのチームが政権を握り、前任者たちの過ちを繰り返して新たな戦争を始めるつもりはないとしても、ロシアの次の政治指導者がそれを望まないという保証はありません。

レオニード・ヴォルコフのTwitter / Xページのスクリーンショット

ナワリヌイの関係者はTwitter / Xのアカウントで、「6,000人リスト」のPRに注力していました。「6,000人リスト」には、2023年4月時点、ロシアの汚職やウクライナの戦争犯罪に関与している約7,000人の名前が含まれていました。「チーム・ナワリヌイ」は定期的に、どのロシアのオリガルヒ・政治家・有名人がリストに追加されたか、またどの人が制裁対象になったかを知らせています。「反体制派」と呼ばれる人々のアカウントには、戦争を支持するロシアの人物に関する調査の投稿が何百も行われています:彼らがどのような不動産を持っていてそれが明らかにされていないのか、誰の子供が海外で勉強しているのか、或いはすでに制裁を受けているロシア人がどのようにこれらの制限を回避しているのか、などについてです。特に、ロシアのプロパガンディスト(マルガリータ・シモニャン、ウラジーミル・ソロヴィヨフ、エカテリーナ・アンドレーイェヴァなど)についてです。ロシア正教会とキリル総主教は戦争犯罪を犯しており、制裁リストに含まれるのは当然と考えられています。しかし、「6,000人リスト」は明らかに不完全です。ロシアのエリート・政治家・軍部の最も著名な代表者がほとんど含まれている一方で、戦争犯罪の「実行犯」たちは「6,000人リスト」に含まれていません。

ナワリヌイのチームの仲間はまた、制裁政策についての自分たちのビジョンを支持者たちに説明しようと努めています。彼らの見解では、個人に対する制限(そのために「6,000人リスト」が作成された)は、「プーチンにとって有害になる」べきであるとされています。ナワリヌイの支持者たちのレトリックによれば、リスト上のウクライナでの戦争とプーチンを支持しているすべての人々(リストに載っているか、今後追加されるかにかかわらず)は、ロシア国外にあるすべてのものを直ちに失うだけでなく、西側諸国によって海外渡航の機会も奪われるべきである、とされています。しかし、「リストに掲載されている者たち」はその後、プーチンを支持して制裁下にとどまるか、「職を辞し、プーチンと戦争を公に非難し、知っていることをすべて公表する」ことを条件に制裁リストから削除されるかのどちらかを選択することになっています。にもかかわらず、ナワリヌイの関係者は、そのような人々の評判が完全に白紙となるかどうかは明言していません。例えば、マルガリータ・シモニャンがある日プーチンの政策を非難する声明を発表した場合、ウクライナでの戦争犯罪への関与が明らかであるにもかかわらず、彼女が完全に赦され、制裁対象から外されることが受け入れられるのでしょうか?同時に、このリストのコンセプトは、大多数のプーチンの関係者がロシアによるウクライナでの戦争に積極的に参加しており、戦争犯罪に対して全面的または部分的な責任を負うべきであるという事実を考慮していません。したがって、経済制限の解除という「ニンジン」と引き換えに公の場で声明を発信することは、被害を受けたウクライナ人や被害者の親族・知人の公正な裁きを受けるという絶対的な権利と矛盾するのです。同時に、ナワリヌイのチーム内の全員がこのアプローチを受け入れているわけではありません。

マルガリータ・シモニャン
ロシアのプロパガンディスト、ロシア紙「ラシーヤ・シヴォードニャ(ロシア語名:Россия сегодня)」編集長、多言語プロパガンダTVチャンネル「Russia Today」代表

マルガリータ・シモニャン 写真:Associated Press

一般的な対露制裁の発動については、これらの「反体制派」によれば、「すべてがそれほど単純ではない」とのことです。ナワリヌイのチームは、西側の制裁が効果的であり、誰にでも影響を与えることをロシア人に証明しようとしています。国内生産を発展させようとするロシア当局の試みはすべて失敗し最終的には他の飛行機を修理するために一部の飛行機が解体されるというアエロフロートのような状況につながる、彼らは痛みを伴う、と彼らは定期的に述べています。また、1999年以来の値上げでロシア人を不安にさせようという試みは確かに効果的かもしれませんが、それは制裁による制限に対する別のより巧妙な解釈と結びついています。例えば、ヴャチェスラフ・ギマディは、「『反汚職財団』はパスポートや出生地に基づく制裁ではなく、プーチン政権との具体的な汚職のつながりに基づく制裁に賛同している」と述べています。ナワリヌイの関係者が、彼らの活動の優先事項であるロシアの腐敗との戦いに焦点を当て続けていることは注目に値します。しかし、汚職との戦いは、ロシアの国家機関の効率化につながるだけであり、ロシア政府を浄化することで恩恵を受けるのは、ロシアが戦争を仕掛けていることを黙認しているロシア国民だけです。つまり、ナワリヌイの制裁リストは、ウクライナでの戦争を終わらせるためではなく、ロシア人のためにロシア政府を浄化することを目的としているのです。

経済制裁について、ナワリヌイの支持者たちは、この戦略は実際には間違っていると発言しています。というのも、「反プーチン有権者の20%、つまりヨーロッパに渡航したり、海外送金したり、不動産を所有している人たち」に影響するから、というのです。他のカテゴリの人々に関しては、このような制限は効果的ではないとしています。理由として、この人たちは「これまでまともに暮らすことなど出来てこなかったし、これからもそうすることは出来ない」から、と述べています。「反体制派」はまた、ロシア人のEU入国を禁止する政策を否定しています。彼らは、「ビザをブロックすることは、プーチンとの戦いに貢献し得る人々を苦しめる」と述べています。なぜなら、それは「反戦であるロシア人を民主的な西側から遠ざけ、彼らを苦しめる」からです。レオニード・ヴォルコフは、経済的圧力や渡航制限によってロシア人に全体主義体制を転覆させようとする西側の試みは、ロシア人を「政敵」にするだけだと指摘しています。一方で、実際のところ、ロシア人にはロシアを離れる機会が多く存在しています(そして多くの人がすでにロシアを離れています)。しかし、ロシア国内でも国外でも、戦争に反対するロシア人の大規模な運動はまだ見られません。

また、ロシア人が海外渡航をする唯一の機会である欧州でのリソースや教育プログラムへのアクセスを禁止することも、ナワリヌイ支持者たちは批判しています。Twitter / Xでの投稿では、ナワリヌイの関係者はまた、ウクライナの戦争に関する真実を伝えているとされるTVチャンネル「ドーシチ(ロシア語名:Дождь)」を禁止するといういくつかのEU諸国による決定に対する誤った解釈を発信しています。2022年12月末、「ドーシチ」はリトアニアとラトビアで、クリミアがロシアに含まれた地図を表示し、ロシア軍を支援するための募金活動を放送で宣伝したとして放送禁止になりました。ナワリヌイの支持者たちはまた、EUにおけるRIAノーヴォスチ(ロシア語名:РИА Новости)の禁止を批判し、このメディアはまずロシアで禁止されるべきだと述べています。しかし、EUは管轄権の範囲内でしか行動できないため、RIAノーヴォスチのロシア国内での放送をどのように禁止できるのかは、依然として不明のままです。

ナワリヌイのチームはまた、ロシアからの移住者の生活を困難にする制裁を激しく批判しています。例えばレオニード・ヴォルコフは、「VisaとMastercardの決定によって被害を受けたプーチ主義者など一人も知らないが、プーチンを支持しない多くの人々や独立系メディアには大きな打撃を与えた」と非難しました。しかし、これらの規制は、本格的な侵略が始まる前にロシアを離れたロシア人移民に影響することはまずありません。むしろ、VisaやMastercardの制限は、主に本格的な侵略が始まった後に出国し、ロシアの銀行を使い続けている(つまり、戦争に資金を提供している)ロシア人に関係するものです。

VisaとMastercardの対応
2022年3月、VisaとMastercardはロシアでの事業を完全に停止し、すべてのカード取引を停止すると発表しました。

TVチャンネル「ドーシチ」の放送でのアレクセイ・コロスティリョフ

ロシア人の集団的責任

ウクライナへの戦争に対するロシア人の集団的責任という概念は、西側諸国の人たちには、時として理解されないことがあります。私たちは1億4,400万人のロシア国民全員を非難し、刑務所に入れ、ウクライナ国民の前で罪を償わせることを強制することはできません。ただし、集団的責任と集団の罪を混同すべきではありません。有罪は法廷でのみ、また特定の犯罪を犯した特定の人物に関してのみ証明することができます。ウクライナ人が意図している集団的責任という言葉には、多少異なる意味があります。ロシア人の集団的責任とは、道徳のレベルでの責任です。それは、ロシアの社会が他の集団の人々に危害を加えたことに対して責任を感じていることを前提としています。現時点では、ウクライナに対する戦争中にロシア政府や軍が犯したあらゆる犯罪に対して沈黙することは、ロシアの会社や企業、さらには個人レベルでも頻繁に起こっています。このような沈黙が、ロシア当局による行動と対ウクライナ戦争政策の継続を許しています。これは、戦争に反対して立ち上がらず、戦争の存在と隣国の人々の破壊を無視したロシア社会の集団的責任の一つです。その集団的責任はロシア社会の反省を前提とし、さらなる償い、特に賠償金の支払いに直接つながります。

データを収集していた期間に、ナワリヌイの関係者はロシア人の集団的責任について704件の投稿をしました。最も多く投稿したのはレオニード・ヴォルコフ(232件)、Twitter / Xアカウント「チーム・ナワリヌイ」(125件)、イヴァン・ジュダーノフ(76件)でした。データを暗号化する過程において、調査者は「プーチンの戦争」、「プーチン戦争」などのあらゆる言及を集団的責任に言及したものと分類しました。結局、そのような類型化は全面戦争へのロシア人の関与を薄め、9年以上続いている戦争の結果に対する彼らの(直接的または間接的な)責任を曖昧にすることになります。例えば、レオニード・ヴォルコフは2022年11月、プーチン大統領が総動員令を発令した後、「ロシア社会におけるプーチンの犯罪に対する支持は低下している」と投稿しました。あたかもプーチン大統領自身がウクライナの多数の地域で拷問部屋を設置し、民間人を強姦したり銃撃したりしているかのようです。キラ・ヤルミシュの投稿によれば、「都市を爆撃し、罪のない人々を殺害」しているのはプーチン大統領であり、あたかもこれらの犯罪に関係している軍人と当局者たちは関係がないかのようにされています。同時に、たとえばマリア・ピェフチフは、「戦争を理由に(ロシアの)大臣、副大臣、少なくとも役人は一人も辞任しなかった」ことに驚いたといいます。「全員が戦争を支持しているのだろうか? 他にどのように解釈できるのだろうか?」 彼女はTwitter / Xのフォロワーにこのような質問を投稿しました。

アレクセイ・ナワリヌイの投稿に、モスクワ在住者700人を対象とした調査の結果が掲載されました。ナワリヌイは、戦争当事者の双方(つまりウクライナも)が武器を放棄すべきだという回答について、ロシア人の戦争に対する支持が低いためと解釈しています。

ナワリヌイの関係者は、実際にはロシア人はプーチン大統領を支持しておらず、権威主義的な統治の下ではいかなる社会学的研究も無意味であるという考えを積極的に擁護しています。ウラジーミル・ミロフはTwitter / Xで、ロシア人の約3分の2がウクライナに対する戦争を支持しているというデータを拡散する人々を愚か者と呼びました。これは「人々を分断」し、プーチンとの戦いを妨げるだけだと彼は主張しています。これとは対照的に、ナワリヌイの関係者は、ロシア人がウクライナで始めた戦争に対する「本当の」支持率を反映すべきである「反汚職財団」が定期的に実施している現実を反映していない(彼ら自身も認めている)独自の世論調査を推進しています。

ナワリヌイのチームのメンバーは、以前は科学的基準に従って世論調査を実施していましたが、全面侵略が始まってからは、ウクライナに対する戦争について話すことを好むロシア人がますます少なくなったために、調査の信憑性がないことを認めざるを得なくなったと指摘しています。このような沈黙は、ウクライナでの犯罪に対する集団的責任に対するロシア人の態度の確かな表れでもあります。例えば、彼らによって選択されたサンプルは、インターネットを積極的に使用しているロシアの首都の居住者の意見のみを反映しています。そのため、2022年6月に実施された世論調査の結果によると、ロシア軍に資金を提供するためにより多くの予算を割り当てる必要があると考えているのは回答者のわずか7%であり、ナワリヌイのチームはこれを実際に戦争を支持するロシア人がいかに少ないかを示す指標だと解釈しています。

この調査のサンプル対象がモスクワ在住の700人のみとしているため、傾向を捉えようとするこの試みは、少なくとも自分の意見を裏付けるために定量的指標を操作する試みに近いということを念頭におく必要があります。

同様に、「反体制派」は、ますます多くのロシア国民が自国を平和国家ではなく侵略国家と考え、戦争を非難し始めているというデータを広めています。一方で、実際のところは、ロシアを侵略者と考えているのはわずか36%で、残りは西側諸国、ウクライナ、あるいは「双方」のせいだとしています。

いずれにしても、ナワリヌイのチームの代表者と同様に、彼らの調査は人口1,200万人の首都のごく一部の住民の意見のみを反映しており、ロシア全地域の意見を反映しているわけではないことが明らかになっています。ナワリヌイのチームはこれらの限界を認識しており、これらの調査を実施する際には、サンプルが少ないとしても、様々な期間にわたる変化のダイナミクスに注目しています。

戦争支持に関するデータ
2022年8月に実施された全ロシア世論研究センター(ロシア語: ВЦИОМ)の社会学調査。

モスクワの住民700人を対象とした調査結果によると、2022年3月時点でロシアを侵略者と考えている人はわずか36%でした。

ナワリヌイの支持者はロシア人が「奴隷」、「民主主義的でない」と呼ばれていることに非常に腹を立てており、これらの発言を「プーチン支持的」、「不道徳」、「虚偽」とみなしています。しかし、Twitter / Xでの投稿ではなく、実際の行動や少なくとも何かをしようとする組織的な試みによってそれは間違っていると証明する必要があると考える余地はあるものの、それを実行していないようです。ナワリヌイのチームの代表であるゲオルギー・アルブロフは驚き、もしロシア人が奴隷の遺伝子を持っているなら、これらの奴隷の遺伝子を持たずにロシアに住む300万人のウクライナ人はなぜまだ政権を打倒していないのか、と述べました。また、ナワリヌイの関係者は、ロシア国民が集団的責任を負うべきであると同意することがありますが、たいていこの発言の後には続きがあります。例えば、ウラジーミル・ミロフは自身のTwitter / Xで次のように自分を正当化しました:「責任はロシアとロシア人にあるが、言い過ぎる人もいる。」 「私はプーチン大統領を阻止するためにあらゆることを行ったので、その責任を負うことは拒否する。」そして彼の仲間であるヴャチェスラフ・ギマディは、集団的責任は「プーチン大統領の規範形成のトリック」だと考えています。これらの「反体制派」の反論は足を引きずっているように見えます。

同時に、The Washington Postの記事の中で、ナワリヌイは「反体制派」の指導者として、「ウクライナとの戦争は、もちろんプーチンによって始められ、行われている<...>しかし、戦争の本当の当事者はエリート層全体と権力システムそのものであり、それは際限なく自己増殖する帝国主義的ロシアの権威主義を象徴している」と述べました。繰り返しになりますが、いわゆるロシアの反体制派の論理によれば、「小さな人々」は罪悪感と責任の文脈の外に留まり、「ウクライナの人々は暖かい家で夜を過ごすべきであり、彼らが地下鉄で夜を過ごす責任は、プーチン大統領にある」と指摘されています。

パフォーマンス中のアレクセイ・ナワリヌイ オープンソースからの写真

ナワリヌイのチームの目から見た戦争犯罪人に対する裁判

ナワリヌイのチームの間で3番目によく取り上げられるトピックは、戦争犯罪者の処罰とその裁判です。市民ネットワーク「OPORA」の調査者は、ロシアによるウクライナに対する戦争の犯罪性・ロシア当局の行動・プーチン大統領と側近のテロリストとしての行動の定義についての言及をこのカテゴリーに含めました。データ収集期間中、サンプルの代表者はこのトピックに関して354件の投稿をしました。戦犯法廷について最も多く言及したのは、レオニード・ヴォルコフ(90件)、「ナワリヌイLIVE」アカウント(47件)、マリア・ピェフチフ(40件)でした。

ナワリヌイは「15箇条」の中で、全面戦争終結後、ロシアの新政府は「国際機関と協力して戦争犯罪を調査」すべきだと述べました。ちなみに、ウクライナも国際社会もこの声明には同意しないでしょう。 戦争犯罪の問題は国際法に従って検討されるべきものであり、侵略国の裁量に委ねられるべきものではないからです。ウクライナの領土におけるロシア軍による戦争犯罪の捜査はかなり長期間続いており、一部の戦争犯罪者はすでに服役中となっています。今春、国際刑事裁判所は、ウクライナの子供達の不法国外追放に関与したとして、プーチン大統領とマリア・リボヴァ=ビェロヴァに逮捕状を出しました。したがって、反体制派の見解は現実からやや乖離しているように見えます。

レオニード・ヴォルコフのTwitter / Xのスクリーンショット

ナワリヌイの関係者は概ねナワリヌイの見解に同意しており、彼らのほとんどはTwitter / Xで特定のロシア人の行為を戦争犯罪と認め、国際法廷の創設やプーチン大統領のハーグへの移送を求めていました。興味深いことに、ナワリヌイのチームは、ウクライナ領土内でロシア軍が犯した戦争犯罪について頻繁に投稿しています。例えば、彼らはブチャやキーウ周辺の町やその他の地域での事件を読者に知らせ、これらの事件をウクライナ国民に対する大量虐殺と呼びました。レオニード・ヴォルコフは、戦犯に対する裁判がロシアがプーチン主義のイデオロギーから逃れることのできる唯一の方法であると投稿し、「もしプーチンが今、敗北する前に、裁判の前に、暴露の前に死ねば、イデオロギーとしてのプーチン主義は生き残るだろう」と投稿しました。そして、「指導者を殺害しなければロシア人が勝てたかもしれない」「プーチンの下では秩序と安定があった」と多くの人は信じるだろうと、「反体制派」は考えています。プーチン大統領は「支持者の記憶の中に伝説として残ってはいけない」ため、「プーチン大統領が敗北し、自らの政権が崩壊する」方がロシアにとって良いことで、彼の本当の姿は「哀れで、卑怯で、強欲な狂人」だとヴォルコフは述べています。

演説中のアレクセイ・ナワリヌイ オープンソースからの写真

しかし、これらの犯罪に関するナワリヌイの支持者の投稿を読むと、犯罪の当事者が誰なのかが非常に分かりづらいものとなっています。彼らの投稿の中には、犯罪者と占領者はロシア軍であり、ロシア軍は「犯罪的な戦争に参加している」ため、つまり「軍隊に入ることは戦争犯罪に加担することを意味する」という記述があります。例えば、ナワリヌイLIVEアカウントは、「ロシア兵はロシアを守り、兵舎にいるべきです。我々を攻撃していない外国の領土に現在いる全てのロシア兵は、重大な戦争犯罪に加担しているのです」と記載しています。もう一人の「反体制派」ウラジーミル・ミロフは、「偉大なロシア文化」を忘れること、そして「世界におけるロシアの長年のイメージは、ブチャにおけるロシア兵による虐待である」という事実を受け入れることを促しました。

ナワリヌイのチームは、ロシアのプロパガンダ活動家も「戦争犯罪者」と呼んでいますが、その理由を、彼らが「プーチン大統領の戦争犯罪を容認するだけではなく、プーチン大統領に戦争犯罪を行うことを要求するような世論を作り出している」からとしています。例えば、マリア・ピェフチフは、ルワンダのマスメディア「Radio Télévision Libre des Mille Collines」(RTLM)の事務局長フェリシアン・カブガがルワンダで1994年の大虐殺に加担して逮捕されたことに言及し、 マルガリータ・シモニャンが彼に続く可能性があることをほのめかしました。同時に「侵略の責任があるのはただ一人、ウラジーミル・プーチンだ」という忌まわしいプロパガンダ活動家マリーナ・オフシャンニコヴァの言葉を支持する投稿もあります。しばらくの間、オフシャンニコヴァはロシア抵抗運動におけるヒロインに近い存在でしたが、実際にはこのジャーナリストは2014年のロシアによるウクライナに対する戦争開始以来、ロシアのプロパガンダのために活動してきました。たとえ彼女の立場の変更が誠実なものであったとしても、彼女が8年間にわたり関与した犯罪の責任が赦されるわけではありません。キラ・ヤルミシュは、ブチャでの虐殺と民間インフラへの大規模なミサイル攻撃はプーチン大統領の責任であり、「彼は許せない」と投稿しました。そしてナワリヌイは、動員を「プーチン大統領が犯した犯罪に人々を巻き込もうとする試み」であると述べました。

ルワンダ(東アフリカ)における大量虐殺
1994年に国内の最も多い民族、フツ族によって行われたツチ族に対する大量虐殺。 国連の推計によると、100万人以上が死亡しました。RTLMラジオはプロパガンダの源泉として機能し、憎悪と暴力を煽り、ツチ族の人間性を奪いました。

ロシア戦犯の足 オープンソースからの写真

ナワリヌイのチームは、ロシアの戦犯に対する裁判を正確にどのように進めるべきかについての最終的なビジョンも持っていません。例えば、ウラジーミル・ミロフは、欧州議会が2023年1月に法廷の設置を支持する決議を採択したことに喜びました。ルスラン・シャヴェッディノフは、MH17事件(2014年7月17日にドネツィク近郊でボーイング777型機が撃墜された事件)の判決についてコメントし、今後の事件もハーグで検討されるべきであると書きました。そして、Twitter / Xチャンネル「ナワリヌイLIVE」には、ロシアの戦犯はウクライナの法廷かハーグの法廷で刑を宣告されるべきだという投稿がされています。 ゲオルギー・アルブロフは、ロシアの政府上層部(プーチン、ショイグ、カディロフなど)は、ロシアの独立法廷の後に国際法廷に送られることになるだろうと書きました。しかし、ナワリヌイのチームは、ロシア連邦が彼らの指導の下、どのように戦争犯罪人を国際法廷に引き渡すことを約束するのかについては明らかにしていません。

2023年5月中旬の時点で、ロシアは依然として国連安全保障理事会で拒否権を持っており、これによりロシアに対するウクライナの訴訟における国際刑事裁判所の決定を阻止することができるため、ナワリヌイのチームのこうした言説は、現時点においてポピュリズム的な投稿に過ぎません。

ナワリヌイのチームは占領地の返還をどう見ているか

1年間のデータ収集期間中に、いわゆる反体制派はウクライナの一時占領地域について175件の投稿をしました。これらの地域に対する立場や計画を含むメッセージだけではなく、その地域について言及されたメッセージも調査対象になりました。このトピックに関して最も多く投稿したのはレオニード・ヴォルコフで、年間59件でした。他のすべての「反体制派」は同数で、年間11~17件でした。

一般的に、ナワリヌイの関係者は、ウクライナがすべての領土を取り戻し、1991年の国境を回復すべきであるという意見で一致しています。

占領地に関する言及は全て、犯罪的占領とこれらの領土をウクライナに返還する必要性に関するニュースコンテンツまたは声明のいずれかです。場合によっては、「反体制派」が自分達の独裁政権を打倒できないことを何らかの形で正当化するために、この話題を恣意的に利用することすらあります。例えば、ウラジーミル・ミロフは、ロシアでの抗議運動の脆弱さへの批判に対し、「ウクライナの占領地の住民が占領者を追い払ったら、適切な『抗議』方法の手本になるだろう」と述べました。また、「ロシアにおけるテロの実際の状況」を知らないと彼らが考えているウクライナ人にも訴え、「その状況について、占領地の状況から理解しようとすることができる」と述べました。もちろん、ミロフ自身がモスクワの勝​​利公園以外の場所で戦車を見たり、ノートパソコンのスピーカーからではなく実際に砲撃を聞いたかどうかは非常に疑わしいです。

ナワリヌイのチーム代表であるウラジーミル・ミロフの投稿 1番目の投稿で、彼はシベリアの山火事はウクライナ占領地におけるロシア占領者の活動と何ら変わらないと主張しています。

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ナワリヌイのチーム代表であるウラジーミル・ミロフの投稿 1番目の投稿で、彼はシベリアの山火事はウクライナ占領地におけるロシア占領者の活動と何ら変わらないと主張しています。 2番目の投稿では、「ウクライナの占領地の住民が占領者を追い払ったら、適切な『抗議』方法の手本になる」と主張しています。

2番目の投稿では、「ウクライナの占領地の住民が占領者を追い払ったら、適切な『抗議』方法の手本になる」と主張しています。

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ナワリヌイのチーム代表であるウラジーミル・ミロフの投稿 1番目の投稿で、彼はシベリアの山火事はウクライナ占領地におけるロシア占領者の活動と何ら変わらないと主張しています。 2番目の投稿では、「ウクライナの占領地の住民が占領者を追い払ったら、適切な『抗議』方法の手本になる」と主張しています。

ロシアとウクライナの交渉について

調査対象者はロシアとウクライナの交渉について98回投稿し、そのうち75回はレオニード・ヴォルコフによる投稿でした。ナワリヌイの支持者は、両党が対立し、ロシアの外交官が「ギャング」のように振る舞っている間は交渉は不可能だと考えています。

また、停戦合意は戦争の最終的な解決を意味するのではなくロシアと「疲れた欧州」のためだけに有益な紛争の凍結を意味するため、交渉はロシアにとって有益なだけでいかなる停戦合意も危険であることは、調査対象者にとっても明らかです。レオニード・ヴォルコフによれば、欧州は「良い戦争よりも悪い平和」を望んでいるといいます。しかし、このような言説には弱点もあります。ヨーロッパ諸国がウクライナを支援し続けていることです。したがって、ヨーロッパ諸国がロシアによるウクライナに対する戦争が終わるのを黙って待っているだけであるとただ発信することは、的外れです。さらに、世界中の民主主義国家のほぼすべてが、ウクライナの和平案に満場一致で同意しています(特に欧州連合、PACE、国連でその支持が表明されました)。

ナワリヌイのチームの代表者の投稿 プーチン政権の下、ロシアはこれまでに署名したすべての国際協定に違反しています。 言うまでもなく、ロシアはソ連時代にもエリツィン政権時代にも国際協定に違反していました。

ナワリヌイのチームから見たウクライナへの武器供与

データ収集期間中、このトピックに関する投稿は50件のみで、そのうち20件はレオニード・ヴォルコフによって投稿されました。

ナワリヌイの支持者は概してウクライナへの武器供与を支持しており、もしウクライナにもっと早く武器が供与されていれば全面戦争は起こらなかっただろうと強調しています。しかし2015年、アレクセイ・ナワリヌイ自身がThe Washington Postのインタビューで、「ロシアに対するウクライナの軍事的勝利は不可能」であるため、西側諸国はウクライナに武器を送るべきではないと主張しました。ナワリヌイはまた、Javelinの使用にかかる費用と、「ウクライナで起きていることの真実を伝えるビデオが少なくとも800万回再生される」インターネット広告の量を比較しました。ロシア人にとっては、国際メディアやウクライナのメディアのニュースを読むだけで十分なのかもしれませんが、ロシア軍の進撃をインターネット広告で止めることはできないのです。

レオニード・ヴォルコフのTwitter / Xのスクリーンショット

ロシアの「反体制派」は概して、ウクライナへの新たな武器供与について投稿し、戦車の供与を喜び、ウクライナへの防空システムの提供を求めています。特にレオニード・ヴォルコフとイヴァン・ジュダーノフは、西側諸国はウクライナに戦車や飛行機を供与すれば核兵器を使用するというクレムリンの脅しを気にする必要はなく、その脅しは単なる雑音にすぎないと発信しています。一方で、ナワリヌイのチームは交渉よりもウクライナへの武器供与を重視していますが、ウクライナへの武器供与を求める運動は年に数回の投稿にとどまっています。

アレクセイ・ナワリヌイのTwitter / Xの投稿

また、ロシアの「反体制派」は投稿の中で、「バイラクタル」やその他のウクライナ向け兵器供与のための外国の資金集めキャンペーンに言及し、リトアニア人の「団結と自主組織化」を称賛し、「ロシアでは、似たような規模のクラウドファンディングキャンペーンは一度もなかった」と不満を漏らしています。しかし、ロシアで同様のキャンペーンを組織する可能性について質問されたレオニード・ヴォルコフは、ロシアからウクライナ軍を支援するのは危険すぎるため、ナワリヌイのチームはそのような取り組みはしないと答えました。同時に、ロシアの「反体制派」は、安全な国外にいるロシア人の権利を積極的に主張していますが、ウクライナの勝利を支援するよう呼びかけることはしていません。

リトアニア人の自主組織
これは、2022年5月にリトアニアのテレビ司会者アンドリュース・タピナスによって発表された、ウクライナに送るドローンのための募金活動です。リトアニア人は3日間で500万ユーロを集めました。Baykarという会社がリトアニアに「バイラクタル」を寄贈し、リトアニアが2022年7月にウクライナに引き渡しました。

強制移住させられた子供の返還と賠償金の支払い

データ収集の1年間に、ロシアによって強制連行されたウクライナ人の子供達に関する投稿をナワリヌイの関係者がしたのはわずか12件で、そのほとんどはニュース的な内容でした。彼らは(予想通り)これが大量虐殺の前兆であるとは言及しておらず、強制連行された子供達の返還や救済の仕組みについても議論していません。

「反体制派」が議論していた中で最も少なかったのは、ロシアによるウクライナに対する戦争が終結した後、ロシアはウクライナに対してだけではなく、ロシアによる全く理不尽な侵略で財産を失った全てのウクライナ人に対しても賠償金を支払わなければならないことに関してでした。データ収集期間中、この議論に関する投稿は3件のみでした。そのうち2件はレオニード・ヴォルコフによって投稿され(2022年3月から8月)、もう1件はナワリヌイLIVEチャンネルのアカウントによって投稿されました(2022年3月)。ナワリヌイの支持者は3回の投稿全てにおいて、戦争終結後「プーチン大統領個人の責任として、ロシア人を辱めることに加え」ロシアはウクライナに「数千億ドルの賠償金」を支払うべきであると述べました。しかし、レオニード・ヴォルコフによれば、一般のロシア人が賠償の負担を負うべきではないとしています。その理由として、「プーチンの側近たちはずっと多くの物を盗んだのであり、押収された彼らの資産で賠償をするべきである」からだと述べています。したがって、これら3つの投稿の中でさえも、賠償金の支払いはロシア人にとって「大きな精神的かつ金銭的損害」であるという考えをロシアの「反体制派」は推し進めました。

レオニード・ヴォルコフ、賠償について

ナワリヌイのチームのロシアの将来ビジョン

ナワリヌイのチームはデータ収集の全期間を通じてこのテーマに関して163件の投稿を書きましたが、この問題にはほとんど注目せず、ナワリヌイの支持者による投稿数の中では5位に過ぎませんでした。ロシア連邦の将来について最も多く書いたのはレオニード・ヴォルコフ(97件、全体のほぼ60%)、イヴァン・ジュダーノフ(19件)、キラ・ヤルミシュ(17件)でした。

ロシアの未来 イラスト:人工知能DALL-E-2

2022年の間に、ナワリヌイのチームは、ロシアの将来像に関する2つの大きな資料へのリンクを共同アカウントで公開しました。すでに述べた「15箇条」と米国紙「The Washington Post」へナワリヌイが提供した資料です。その両方に、「反体制派」の全員が言及している「未来の美しいロシア」についてかなり明確なビジョンが現れています。戦後の西側諸国とロシア新政府の戦略は、まず第一に、ロシアとその政府が「戦争を始めたくないし、戦争に魅力を感じない」ようにすることを目指すべきだと彼らは考えています。

ロシア社会自体が侵略志向を持っているわけではなく、帝国主義を志向するロシア国民のごく一部の階層によって侵略が引き起こされるのだと、ナワリヌイは考えています。さらに、攻撃的な帝国主義者が再び権力を掌握しないようにするためには、以下のことをすべきであると付け加えました:
ロシアが一人の人間の手にある権力を奪い、議会制共和国に変更し、「社会全体の利益への配慮」が優位な考え方となるシステムを創設すること。
「公正な選挙、独立した裁判所、連邦主義および地方自治による政権交代」を確立すること。
「プーチン政権とその独裁政権」は「理想的には普通自由選挙と憲法制定会議の開催を通じて」解体されること。

議会制共和国としてのロシアの将来について語るナワリヌイ

ナワリヌイの関係者はTwitter / Xで、この議論についてさらに詳しく述べています。 彼らはしばしばロシアの将来はヨーロッパにあると発信しています。例えば、レオニード・ヴォルコフは、欧州議会議員アンドリュス・クビリュスの発言を引用し、「ロシア国民の民主主義の遺伝子が失われることはない」と投稿し、ウクライナでの戦争終結後、ロシア自体が「欧州評議会やPACEやECPRの理事会に復帰するだろう」と述べました。(PACE:欧州評議会議会、ECHR:欧州人権裁判所-編集者)。その理由として「国々は戦うべきではなく、交易し協力し合うべきである」から、と述べています。ちなみに、ヴォルコフは後にクビリュスの同じインタビューを共有し、マーシャル・プランに関する一節に注目するよう読者に求めました。そこで彼は、今後経済的困難により再び戦争が始まらないようにするためには、西側諸国はロシアの復興に向けたロードマップを作成する必要があると述べています。

このような呼びかけは、ナワリヌイの支持者がマーシャル・プランの本質を理解していないことを示しています。なぜなら、マーシャル・プランは第三次世界大戦の阻止やドイツの反政府勢力の支援を目指したものではなく、第二次世界大戦の被害を受けた欧州諸国の復興を目指したものだからです。それとも、ロシアの「反体制派」は、西側諸国から補助金を受け取るために、爆撃や占領そしてロシアを西ロシアと東ロシアに分割することを想定しているのでしょうか?

マーシャル・プラン
1947年にアメリカ国務長官ジョージ・マーシャルによって提案された第二次世界大戦後のヨーロッパ諸国への経済援助計画(1948年4月開始)。

さらに、ナワリヌイの支持者は戦後のロシアについて予測しようとしています。 例えば、ルスラン・シャヴェッディノフは、約1,600万人のロシア人は貧困ライン以下で暮らし、戦争のせいでこの数字は増えるばかりでロシア政府を民主的に変えることはできないと投稿しました。イヴァン・ジダーノフは、ロシア領土内への戦争の拡大は避けられず、ロシア連邦崩壊のシナリオは極めて現実的であると記載しました。一方で、レオニード・ヴォルコフは、「ロシアが内戦で分裂し、核兵器を保有して互いに戦う」ことは起こり得ず、そのような終末論的な予測は主にクレムリン自体にとって有益であると考えています。彼によれば、プーチン政権崩壊後に悪いことは何も起こらないと欧州と米国を説得することが重要だといいます。

それでは、ロシアの「反体制派」の中に本当の反体制派がどのぐらいいるのか?

一般的に、サンプルに含まれていたナワリヌイのチームのTwitter / X活動は、政治活動というよりもメディア活動に近いものでした。ナワリヌイのチームは、数年前まではプーチン政権に代わるほぼ唯一の選択肢であると考えられていました。ニュースの発信にとどまっていることは、ロシアの「野党」の中で最も組織化されたグループの一つが政治的に未熟であることのさらなる証拠にすぎません。彼らは批評家、特にウクライナ人が自分たちの「困難な運命」を理解しておらず、ロシアの平和と民主主義を達成するための彼らの努力を評価していないことについて、定期的に不満を述べています。例えば、ウラジーミル・ミロフは、ウクライナのTwitter / Xユーザーからの批判についてコメントし、次のように記載しました。「何の解釈も存在しないところに更なる解釈を求めているが、やめてほしい。『ウクライナ人はナチスではない、普通の人間だ、プーチンは嘘をついている』と私たちは説明しているものの、ウクライナ人がコメントをし始めると対応が難しくなる。」また、ウクライナの活動家でブロガーのイリーナ・ヒリは、Twitter / Xでマリア・ペヴチを批判したため、ナワリヌイの支持者から「ホホール」「化物」と呼ばれました。

ロシアによるウクライナに対する戦争の多くの側面に関するナワリヌイのチームの価値観や見解は(戦争を望ましくない現実の現れとして非難することや、支配体制に対する基本的な批判を除けば)部分的に矛盾しており、統一されていません。これは、いわゆる「反体制派」にとっての主な問題が、自分たちの団体の指導者を刑務所から釈放することであることが一つの理由です。しかし、ロシアとロシア・ウクライナ関係の将来について彼らが表明した意見は、説明を提供するというよりも、さらなる疑問を引き起こしているのです。

法廷のアレクセイ・ナワリヌイ 写真:AP

「反体制派」は、ウクライナの占領地におけるロシア軍の暴力や犯罪への言及を利用して、ロシア人、特にロシアのリベラル派の苦しみを強調しようとしています。占領下にあるウクライナ人やロシアによって定期的に砲撃を受けている比較的平和な地域に住むウクライナ人達と同じように、彼らも(抵抗する可能性はないように見えるものの)同じように苦しんでいると述べました。

同様に、ナワリヌイの関係者は賠償とロシアの戦後復興に関する議論を自分たちに有利なように利用しています。ロシアが「どん底から抜け出し」ウクライナへの賠償金を支払うためには、将来のロシアに対し様々な支援、特に財政的支援が必要であると強調しています。もちろん、そのようなレトリックは言い訳であり情報操作をしているように見えます。そして、そのレトリックのおかげで、ナワリヌイのチームは、理由もなくこの戦争を引き起こしたのはロシアであることを忘れているようです。

以上の調査の結果、ナワリヌイのチームの代表者が、世界中の平和の構築に対しロシアがどれほどの脅威をもたらしているか、またロシアがウクライナで数世紀にわたるテロ行為を犯してきたことを理解していないことが分かりました。しかし、ロシアの「反体制派」はすでにロシアの戦後復興のための資源を求めて、自らが破壊を進めている国であるウクライナと競争し始めています。したがって、ロシアによるウクライナに対する戦争というテーマに対する世界の注目を利用し、現在および将来の自らの利益のためにロビー活動をしようしているナワリヌイのチームの試みは、排外主義に感染したひ弱な「野党」の行動に見えるのです。

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