まさに東京の中心である人混み溢れる渋谷で、2022年から日本でウクライナ人を支援しているウクライナ心のケア交流センター「ひまわり」とココロゴトカフェは活動しています。ここでは心のケア、社会的事業、文化交流が一体となって行われています。「ひまわり」とココロゴトカフェは日本のウクライナ人ディアスポラにおけるコミュニティの1つとなっています。そこでは、日本語の授業や文化イベントが行われていたり、900冊以上の本を所蔵しているウクライナ図書館も開館しています。
ココロゴトカフェの様子 写真:ダリナ・クカー
「ひまわり」とココロゴトカフェでは、ウクライナ人だけでなく、日本人もサポートに参加し、ウクライナについてより深く知ることができます。「ひまわり」は、パートナーの団体と協力してウクライナ文化に関するイベントを時折開催しています。去年の11月には、ウクライナのクリスマスの曲であるコリャードキのワークショップが開催されました。ココロゴトカフェでは、ボルシチや、クレープに似た料理であるムリンツィというウクライナの料理を楽しむことができます。
「ひまわり」で行われたコリャードキのワークショップ、2025年11月 写真:ダリナ・クカー
今回の記事は、Ukraїnerの日本語版のオリジナル記事となります。この記事では、ウクライナ心のケア交流センターの創設者や、そこで活動している人たち、また、活動内容について、お伝えします。また、日本におけるウクライナ人の社会的統合についても、お伝えしていきます。
心のケアと社会的統合
ウクライナ心のケア交流センターの運営期間中、心理カウンセラーであり実業家である浮世満理子さんをリーダーとする日本のボランティアグループは、支援に意欲的なウクライナ人たちと協力し、約1,500人に心のケアやその他の支援を提供するとともに、ウクライナ人と日本人の社会的統合と相互理解を深めるために100件以上のイベントを開催しました。
ココロゴトカフェと浮世満理子さん 写真:ダリナ・クカー
浮世満理子さんは、日本の心理カウンセラーで実業家であり、一般社団法人全国心理業連合会の代表理事であるほか、株式会社アイディアヒューマンサポートサービスの代表取締役を務めています。長年にわたり、アスリート、特にオリンピックチャンピオンや、2011年の東日本大震災などの自然災害の被災者に対する心理面でのサポートに携わってきました。浮世さんは、自身の経験をウクライナでの戦争により苦しんでいる人々に対するサポートにも活かしたいと考え、現在、日本財団の支援を受けて活動している「ひまわり」を設立しました。
日本で暮らしているウクライナ人に対するに加サポートのほか、浮世さんは定期的にウクライナにも足を運んでいます。現地では複数の団体と協力し、ウクライナの心理学者や心理カウンセラーにアートセラピーの指導を行っています。浮世さんは書道にも造詣が深く、その経験と書道の技術をセラピーの場面に活かしています。
「ひまわり」を訪問しているアンドリー・シビハ外相、2026年6月 写真:ウクライナ「心のケア」交流センターのFacebookページから引用
「ウクライナでの戦争は、ウクライナだけの問題ではありません。21世紀になっても、あのような一方的な侵略を行う国が存在し、国際社会はそれを止めることができていません。」と浮世さんは述べています。「たとえ戦争を直接止めることができないにしても、その戦争を許すことができないと考えている人たちはたくさんいますし、日本人たちはウクライナを助けたいと思っています。助けたいという気持ちがあれば、政府や民間レベル、様々な立場でできることがたくさん見えてきます。」
浮世さんによって創設された「ひまわり」の主な目的は、孤独や孤立に立ち向かうことです。地震や津波の被災者に対する支援の経験によると、トラウマ的な出来事を経験した人々にとって最大のリスクは、自分の中に閉じこもってしまうことです。そのため、心のケアとは、個人レベルでのカウンセリングだけでなく、コミュニティの形成も含まれます。本当の意味でのケアとは、「居場所(いばしょ)」つまり人々が集まり、コミュニケーションをし、リラックスできる安全な空間を作り出すことにあるのです。
「ひまわり」の職員である本田江里子さんも、社会的統合と人々の繋がりの重要性について言及しています。本田さんはカウンセラーで、彼女の本業は株式会社アイディアヒューマンサポートサービスでの仕事で、ボランティア活動の一環で「ひまわり」での運営業務を担当しています。
「ひまわり」にあるウクライナ図書館と本田江里子さん 写真:ダリナ・クカー
本田さんによると、ウクライナ人は日本の全国各地で暮らしており、互いに交流の機会がなかったといいます。このセンターは、交流や助け合いの架け橋となりました。現在、イベントは東京だけでなく、大阪や福岡などの都市でも開催されています。この団体は、ウクライナ人同士の交流と、そのような交流の場に日本人を呼び込むこととの調整をするサポートをしています。こうして、ウクライナ人は言語の壁を乗り越えて日本語を練習できるだけでなく、日本での生活にもより早く慣れることができるようになります。
本田さんはまた、ウクライナ人の社会的適応に向けた取り組みについても教えてくれました。「ひまわり」では、江ノ島の海辺への団体旅行、バーベキュー付きピクニック、水族館観光から、福岡でのウクライナ人カップルのための結婚式や、ウクライナ人のために着物姿で日本の成人式を企画したりするなど、大規模なイベントも含めて、約160件の多岐にわたるイベントが開催されました。特に力を入れているのは、新年やクリスマスといった祝日です。この時期、家族と離れて暮らす避難民(戦争のために日本へ移住したウクライナ人を指す)は、より一層の孤独を感じているからです。
東武動物公園での心のケア交流イベント 写真:「ひまわり」のサイトからの引用
この後ご紹介する村上ダリヤ三都のお話の中で、日本在住のウクライナ人コミュニティにとって象徴的な他の出来事についても話題に上がりました。数年前にはウクライナの音楽グループ「KAZKA」による日本での完全なチャリティーコンサートが行われ、そしてその後には、サッカーチーム「シャフタール」がウクライナ人との交流会に参加しました。ダリヤさんによると、こうした交流を通じて、ウクライナ人が故郷とのつながりを再認識できるだけでなく、日本人にとってもウクライナについてより深く理解する機会になっているとのことです。
七夕イベントの様子 写真:「ひまわり」のサイトからの引用
浮世さんは、文化と芸術を通した社会的統合について、「ひまわり」の活動の中で誇りに思っています。コミュニティの中でウクライナ人と日本人は文化イベントに度々参加をして、クラシック音楽、オペラ、伝統的な日本の劇場を干渉したりしています。
「ウクライナの人たちが、より広く日本の社会に適応することができるように、私たちは努めています。ウクライナ人が自分たちのコミュニティの中だけで交流するだけでなく、日本人のコミュニティやイベントにも参加していければ、と思います。」と、浮世さんは述べています。
社会的統合における課題
ウクライナ人が外国で生活していくにあたっては、日本人にとってもそうであるように、たくさんの課題が存在します。ウクライナ人にとって適応していくことが難しい点があり、その中には日本人にとっては理解することが難しいものもあります。浮世さんは、時間に対する考え方、日本における個人と集団の考え方の違い、あるいは例えば掃除などといった家事に対する姿勢などを例として言及しています。彼女は、日本においてウクライナ人が自己実現をうまくやっていくためには、柔軟性とその国のルールへの敬意が極めて重要であると強調しています。
「自分自身の中にあるプライドや習慣だけに頼って、充実した人生を築くことはできません… 自分が暮らしている場所のルールを尊重することが、日本で生活する上で大切な考え方です。日本で自立したいと考える若者たちにとって、このことを理解することは重要です。」と、浮世さんは述べています。
「ひまわり」では、心のケアだけでなく、実践的なサポートにも力を入れています。ここでは、進路指導のワークショップや、就職活動に向けた日本企業の担当者とのビジネスミーティングが開催されています。ある人は、センターのすぐそばにあるカフェに就職しました。浮世さんはその人のこともサポートしています。
カフェの入口にあるウクライナ支援のためのチャリティーブース 写真:ダリナ・クカー
社会的事業としてのココロゴトカフェ
「ココロゴトカフェ」プロジェクトは、ウクライナ人が実際に働きつつ、業務を通じて日本語の知識を磨くことができる、社会的な就労モデルの実例です。
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浮世さんは次のように述べています:
「私たちのカフェは、ただサポートを受ける場所ではなく、コミュニケーションのための開かれた場所なのです。ここに来てくれる多くの方々は、最初はウクライナのことについてほとんどご存じないですが、この場所がウクライナという国について知っていただける場所になっています。」
2025年の春に来日したヴィクトリヤ・パウレンコさんが、ココロゴトカフェでの勤務体験について語ってくれました。当初は日本語能力が初級レベルだったため、就職活動は非常に困難でした。そこで、友人の勧めで「ひまわり」に相談したところ、ちょうどそのカフェで働く機会があったのです。ここでは、ヴィクトリヤさんのほかにも、数名のウクライナ人が働いています。
ヴィクトリヤ・パウレンコさん 写真:ダリナ・クカー
「日本人がウクライナ料理を注文したら、私はいつも美味しかったかどうか尋ねます。多くの人にとって初めての体験だと思うので。彼らは『おいしい』と言ってくれます。そして、私は『もちろん』と答えます」と、ヴィクトリヤさんは笑いながら話してくれました。
ヴィクトリヤさんによると、彼女が最も印象に残っているのは、ウクライナ人に対する日本人の接し方だそうです。例えば、日本人は日本語のミスを気にせず、むしろあらゆる面でサポートし、より分かりやすい言葉で話そうとしてくれています。これは彼女の同僚もカフェに来店してくれるお客さんも同様です。また、文化の違いから、日本人の同僚はウクライナ人の考え方の一部を理解できないことがよくあります。そのような場合、彼らは必ず確認の質問をし、なぜウクライナ人がそのような行動をとるのかを理解しようと努めています。
東京にあるウクライナ図書館
渋谷にある「ひまわり」の最大の魅力の一つは、ボランティアの村上ダリヤさんが2022年に設立することを決意したウクライナ図書館です。この図書館は、彼女が自ら購入または収集した小さな個人的なコレクションから始まりましたが、それから4年が経った今、「ひまわり」の書棚には900冊以上の本が並んでいます。
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ダリヤさんはドネツィクの出身で、2014年から日本に住んでいます。故郷がロシア軍に占領された後、知人の紹介で日本へ渡りました。自分自身の経験から、いつの日かウクライナ語と文化が失われてしまうかもしれないと懸念しており、ウクライナ語と文化を守ることの重要性を痛感しています。現在、ダリヤさんは図書館の運営に携わるだけでなく、「ひまわり」でウクライナ人向けの日本語講座も開講しています。
ダリヤさんの日本語の授業の様子 写真:ダリナ・クカー
ダリヤさんによると、当初、ウクライナ人のための図書館の設立に対して日本人はかなり懐疑的だったとのことです。一方、本田さんは、日本人は本というものに対して少し異なる考えを持っていると述べています。日本人にとって本とは、何よりもまず情報を伝えるための手段です。一方、ウクライナ人にとって本はより精神的でアイデンティティの担い手としての側面があります。彼女は当初、ウクライナ語圏のコミュニティにとって、ウクライナ語の本の存在がなぜそれほど重要なのか不思議に思っていたと振り返ります。しかし今では、その本が出版された言語と同様に、その文化を守り続けることが非常に重要であることを理解しているといいます。
ロシアが意図的にウクライナ語の書籍や文化を破壊している状況において、東京でのウクライナ図書館の活動は、ウクライナの文化を継承していく取り組みであり、ウクライナ語が生き続け、発展していることの証であると、常に説明している、とダリヤさんは教えてくれました。
当初、書籍は彼女が自費で購入していました。その次の書籍は、リヴィウのチャリティーボックスから届きました。「その後、私は、つい最近まで(7年以上)リヴィウにある書店『イェー(ウクライナ語名:Є)』で事務員として働いていた友人に手紙を書きました。そこで、その書店にチャリティーボックスを設置してもらい、本を購入する人たちが私たちのためにも何か購入してくれるように依頼をしました」と、ダリヤさんは振り返っています。
その後、ウクライナの出版社や財団、ウクライナの作家、そしてこの活動に共感した人々が参加し、無料で書籍を送ってくれています。留学を終えて帰国するウクライナの学生や、日本在住のウクライナ人も、帰国前に積極的に自分たちが持っている本を寄贈してくれています。
村上ダリヤさんとウクライナ図書館 写真:ダリナ・クカー
「『クニゴラウ(ウクライナ語名:Книголав)』出版社が、何の連絡もなく本の入った箱を送ってくれたのです。家に帰ると、とても大きな箱が置いてありました。私はその出版社の常連客で、ある時メッセンジャーで、自分が設立したウクライナ図書館の運営に携わっていることを伝えたことがありました。すると、彼らはただ本を送ってくれたのです。そのようなことは、全く予想もしていませんでした!中には児童書が入っていて、15キロもある巨大な箱でした」とダリヤ語さんは語ります。「その後、『教育イニシアチブ財団(ウクライナ語名:Фонд освітніх ініціатив)』もインターネットで私のことを見つけてくれたらしく、彼らは私に『本を送りたい』と連絡してきました。最初は何かの詐欺なのではないかと思いました。『住所を教えてください、本を送ります』と連絡がありました。最初は返信しなかったのですが、『まあ、試してみよう、何も要求されていないし、住所だけだから』と、後になって考え直しました。住所を伝えると、2週間後に児童書が届きました。本当に驚きました!」
ダリヤさんによると、この図書館は特定の読者層だけを対象としているわけではない、とのことです。ここには、様々な年齢や背景を持つ人々が来ています。家族全員で読むために本が借りられることもよくあります。日本へ避難してきた人々の多くは家族連れでここに移り住んでいるため、子供向けの本も、祖父母向けの本も必要となります。また、東京から遠く離れた場所に住む人々に本を郵送するサービスもあります。
図書館には、それぞれの書籍の著者自らがサインした本が数多くあります。著者たちは、東京のウクライナ図書館への温かいメッセージを添えて、自らダリヤさんに本を送ってくれることも多いそうです。
「アフリカ(ウクライナ語名:Африка)」 著者であるアンドリー・フメニュク(コールサイン:ケリト)のサインと共に。 写真:ダリナ・クカー
「ソロミヤ・クルシェリニーツィカのオペラの世界」 ウクライナの指揮者であるオクサーナ・リーニフより贈呈されました。サインは彼女によるものです。 写真:ダリナ・クカー
また、ウクライナ図書館が主催する書籍イベントである「東京での文学夜会(ウクライナ語名:Літературні вечорниці у Токіо)」では、著者を招いた集まりや本に関するディスカッションが定期的に開催されています。こうした集まりの多くはオンラインで行われていますが、オフラインのイベントもあります。例えば、2026年にはココロゴトカフェにて、ウクライナの国民的作家の一人であるレーシャ・ウクラインカの生誕155周年を記念した詩の朗読会、ウクライナの詩人イリーナ・シュヴァロヴァ氏との対談、そして出版社「Vovkulaka」によるウクライナ漫画の発表会が開催されました。2025年12月には、東京で日本初のウクライナ文学フェスティバル「ウクライナからの声(ウクライナ語名:Голоси з України)」が開催され、ウクライナの作家や出版社が参加しました。翻訳をする上での課題がありながらも、このようなイベントには日本人にも積極的に参加を呼びかけ、ウクライナ文学を紹介しています。
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日本人作家を招いた同様のイベントは日本人にとってあまり人気がないだろうと、本田さんは述べています。ウクライナ人コミュニティの人々が文学イベントに参加したいと望む姿勢に、彼女は心から驚いています。
ウクライナ人や日本人との活動に加え、ダリヤさんは国際的な関係づくりも進めています。東京のウクライナ図書館はリヴィウ市立図書館と協力覚書を締結し、ウクライナ全土を対象とした図書交換プログラムにおいて、初の海外参加団体となりました。今後の計画では、香港の参加を募るほか、ニュージーランドとのテレビ中継による交流や図書交換も予定しています。
「ひまわり」は、浮世さんが運営する自己啓発スクールと施設を共有しています。同施設は日本人向けの様々な講座が行われる教室としても機能しているため、講座開催中は平日・休日を問わず、ウクライナ人や日本人が本を借りるために訪れることができます。本田さんによると、日本人はこうした機会についてあまり意識していないことが多いですが、ウクライナ語を学んでいれば、図書館でウクライナ語の本を借りることもできるそうです。さらに、同センターでは2026年秋から、「ウクライナ文化センター」との提携により、日本人をはじめとする外国人を対象としたウクライナ語講座の開催が計画されています。
今後予定されているイベントについて
「ひまわり」は、8月に複数のイベントを計画しています。その中には、8月12日から26日までココロゴトカフェで開催される、Ukraїnerによる写真展も含まれています。この展示会では、ウクライナの自然や文化の風景を紹介する予定です。また、8月16日にはウクライナ図書館で文学夜会が開催され、そこでは図書交換、オープンマイク、ワークショップなどが予定されています。
ウクライナセンターの展望
ウクライナ人をサポートする同センターは、活動を縮小する予定はありません。当初は避難者への単なる支援にとどまっていましたが、今ではそれ以上の存在となり、ウクライナ人と日本人が互いをより深く理解し合える場へと発展しています。
交流のための大規模なプラットフォームの構築が計画されています。浮世さんによれば、ウクライナ人と日本人それぞれが独自のコミュニティを作っても、その間には強固なつながりは生まれないと述べています。現在、浮世さんは、駐日ウクライナ大使に新たに就任したユーリ・ルトヴィノフ氏と協議を進めています。今後の主な目標は、日本のさまざまなスポンサー、ボランティア、企業、そして小規模な市民団体を結びつける、強固で統一されたプラットフォーム(クラウドファンディング型あるいはコーディネート型)を構築することです。これにより、ウクライナ大使館や政府と直接の接点を持たない小規模な団体でも、円滑なコミュニケーションを図り、共同プロジェクトをうまく進めることができるようになるでしょう。さらに、同センターは、グローバル難民フォーラム(国際連合)において、過去4年間の活動報告を行う予定です。これについては、すでに数年前から取り組みが始まっています。現在は、国際レベルでこのプロジェクトの基盤をさらに強固なものにしていく必要があります。
ココロゴトカフェで開催された陶芸ワークショップで、子どもたちによって制作されたランタンが展示されている様子。 写真:村上ダリヤさんのFacebookページから引用